泣き顔の白猫

クラスの日常風景、といった感じで撮られた写真には、六人の少年が、肩を組んだり後ろから覗き込んだりして写っている。

集合写真でも行事写真でも同じだった顔ぶれだ。
そしてそのどれもで中心に写っている男子生徒を、校長は「彼です」と指す。

「確か、クラスメイトが逮捕されたんでしたね」
「えぇ、大変な事件でした……。鈴木くんたちもよく知る子だったので、ショックを受けてしまって」

ふと加原は、校長が被害者たちを呼ぶ時、決まって「鈴木くんたち」と言っていることに気付いた。
恐らく畑野少年が亡きあとは、鈴木学がグループの中心になっていたのだろう。

「よく知る子、というのは……?」

加原が尋ねると、校長の視線が、並べられた写真の上をうろつく。
しかしやがて顔を上げると、言った。

「畑野くんと交際していたらしい女子生徒だったんですよ」
「え? 彼女に刺されたんですか?」
「えぇ、まぁ……高校生といっても、色々ありますからね」

濁すように言う校長に、加原はへぇぇ、ともひぇぇ、ともつかない声を上げる。

平たくいうところの、痴情のもつれ、というやつだ。

加原の高校時代といえば、警察官を志して勉強をしながらも部活と遊びに忙しくて、同級生や先輩の修羅場話なんかは、完全に他人事として聞いていた。

同級生と付き合ってみたりもしたが、気の合う女友達の延長線、という感じだった気がする。
体育会系の友人ばかりだったからかもしれないが、あまりべたべたした関係になったことはない。

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