ミラヘノラブレター

■歌姫



(絶対教えてなんかあげない…!!)

言わないって言ったのに、ヤトは涼しい顔してまた星を見る。
いつもそう。
私の話は流して聴くんだから!!

時空を越える理由。
それは"カレ"に逢いたいから。

ヤトを見つけた時はやっと見つけたって思ったけど…違うのかもしれない。
"カレ"に似ているのにどこか違う。
何って言えないんだけど。
こんなに冷たくないし…。

もしかしたら"カレ"は"ココ"にはいないのかもしれない。

マサキさんには最初の時にバレてしまったけど、私は"ココ"の人じゃない。
"カレ"を探して"ココ"にいる。
機械だけで解るなんてマサキさんはやっぱりすごいと思う。
ヤトなんて気付きもしない。

マサキさんには機械についてアドバイスする代わりに、秘密にしてもらっている。
私だって見つかればただのモルモットだから。

("カレ"はどこにいるんだろう…?)

星空を眺めながら"カレ"を探す。
本当にどこかにいるのかな…。

だんだん、"カレ"が"ココ"に居ないのなら帰ろうと思い始めた。
強引に家を出て来たけれど…"カレ"の姿はどこにもない。

悩みながら、路地で歌を唄っていたら、捕まってそのまま歌姫にもなってしまったし。
"カレ"に私は"ココ"にいるよって言いたくて始めたけど…連絡もない。

"カレ"は本当にいないのかもしれない…。

「サアラ?」

「え?」

考え事をし過ぎていたらしい。
ヤトが心配そうに私を覗き込んでいた。

「大丈夫か?どうした?」

こんなところがすごく嫌い。
"カレ"に似ている。

「大丈夫。ちょっと考え事。」

「そうか…。」

まだ少し心配そう。
だけど私が大丈夫って言ったから、そのまま星空を見上げた。

ヤトはどうして帰らないんだろう?
探さないんだろう?

私みたいにヤトを探している人がきっといるのに…。


< 7 / 23 >

この作品をシェア

pagetop