ミラヘノラブレター
■歌姫
(絶対教えてなんかあげない…!!)
言わないって言ったのに、ヤトは涼しい顔してまた星を見る。
いつもそう。
私の話は流して聴くんだから!!
時空を越える理由。
それは"カレ"に逢いたいから。
ヤトを見つけた時はやっと見つけたって思ったけど…違うのかもしれない。
"カレ"に似ているのにどこか違う。
何って言えないんだけど。
こんなに冷たくないし…。
もしかしたら"カレ"は"ココ"にはいないのかもしれない。
マサキさんには最初の時にバレてしまったけど、私は"ココ"の人じゃない。
"カレ"を探して"ココ"にいる。
機械だけで解るなんてマサキさんはやっぱりすごいと思う。
ヤトなんて気付きもしない。
マサキさんには機械についてアドバイスする代わりに、秘密にしてもらっている。
私だって見つかればただのモルモットだから。
("カレ"はどこにいるんだろう…?)
星空を眺めながら"カレ"を探す。
本当にどこかにいるのかな…。
だんだん、"カレ"が"ココ"に居ないのなら帰ろうと思い始めた。
強引に家を出て来たけれど…"カレ"の姿はどこにもない。
悩みながら、路地で歌を唄っていたら、捕まってそのまま歌姫にもなってしまったし。
"カレ"に私は"ココ"にいるよって言いたくて始めたけど…連絡もない。
"カレ"は本当にいないのかもしれない…。
「サアラ?」
「え?」
考え事をし過ぎていたらしい。
ヤトが心配そうに私を覗き込んでいた。
「大丈夫か?どうした?」
こんなところがすごく嫌い。
"カレ"に似ている。
「大丈夫。ちょっと考え事。」
「そうか…。」
まだ少し心配そう。
だけど私が大丈夫って言ったから、そのまま星空を見上げた。
ヤトはどうして帰らないんだろう?
探さないんだろう?
私みたいにヤトを探している人がきっといるのに…。