秘めた想い【短編】
葬儀
「…故人は生前は明るく天真爛漫で…。」

「…それでは、故人を偲びまして……ご冥福を…。」

線香の匂いに包まれながら、ただただ徐々に集まってくる人たちを眺めていた。

故人の両親の話が始まると、いたたまれなさに、工藤は葬儀の途中で席を立ち、外の空気に触れた。


もう四月に入ったというのにまだ少し肌寒い。

冷気に触れると、工藤の頭は冷静さを取り戻した。

落ち着いた脳が冷たい風に刺激されて、思い出すのは25年間もの間、常に振り回され続けた日々だった。
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