夏と秋の間で・甲
「なぁ、サンマ。」



 その日の放課後。



 いつものように、体育館裏で望巳と亜紀は二人並んでタバコを吸う。



 去年から当たり前のように、続いている普通の日常。



「何?」



「・・・・前々から言ってるお前の好きな男ってさ・・・・・・・もしかして、俺か?」



 あえて、亜紀の方は見ないようにしながら声を出す。



 分からないことは、聞いてみるしかないと思っての行動だったが、やってみると、ものすごく恥ずかしい。



「え?」



 不思議そうな亜紀の声。



 当たり前だ・・・。自分だって同じようなことを聞かれたら、驚く。



「あ、いや・・・なんでもない。やっぱり、今の無し・・・・。」



 必死に今の言葉を否定しようとしたが・・・



「うん。そうだよ。」



 意外すぎる亜紀の返事。



「・・・・え?」



 今度は、自分が不思議そうな声を出す番だった。


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