夢花火
「水野!!」
私も、慌てて走り出した。
…でも、遅かった。
一台の車が、水野に向かって走ってくる。
水野はそれに気付かずに、ニコニコしながら猫を抱き上げる。
「あ~、良かった!ギリ助かったぁ」
「ーーー水野っ!!」
キキィィィーー……!
高い衝撃音が響く。
車が、水野にぶつかった。
「嘘…」
水野が…
死んだ……?
「水野!!」
水野の所に行こうとした。
でも…。
私の足は止まってしまった。
水野の姿が、そこにはなかったのだ。
猫だけが、あくびをしてそこに座っていた。
そして私と目が合うと、ハッとしたかのように金色の目を光らせて、暗闇に消えた。
水野が…消えた……?
荷物もなく、最初から存在していなかったかのように、消えていた。
私は、これが全ての始まりだということに、まだ気付いていなかった。