君にすべてを捧げよう

 ο
  °
   ・

「ねえ!? なんで? なんであの時あたしを抱いたの!?」

「気の迷い、だよ。あの時は、どうかしてた」

「……!」


気の迷い。
そう言われてしまえば、何も言えない。

あの時、気持ちを吐き出して縋ったのはあたし。
蓮はその相手をしてくれたに過ぎない。

蓮の背中に置いていた拳が、ずるりと落ちた。


「そ、う……。気の迷い、なのね」

「ああ。だからもういいだろう? 鏑木くんのところに戻れよ」

「……」


今ここで、鏑木さんの名前を出すんだね。
あたしのことなんて、本当にどうでもいいんだね。

あたしはただの、ハトコだもんね……。


涙を乱暴に拭い、立ち上がった。
首から水晶のネックレスを外し、蓮の背中に投げつける。


「返す。もう、こんなのいらない」


しゃらりと音を立てて、ネックレスは布団の上に落ちた。


「蓮、ばいばい」


扉を開け、背中を向けたまま言う。蓮からの返事はなかった。


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