君にすべてを捧げよう
心がどこかに置き去りにされているような気がする。
泣きわめきたいのに、心が遠くにありすぎて、体が反応しない。

のそりとキッチンに入って、びくりとした。
リビングで眠っているはずの鏑木さんがいた。


「あ、勝手にお水貰ったよー」


あたしに気付いて、空になったコップを振る。


「あ、いいですよ。どうぞ」

「ん?」


コトンとコップをテーブルに置いて、鏑木さんはずいとあたしの前までやって来た。
じい、と顔を覗き込む。


「な、なんですか?」

「泣いてた?」

「べ、別にそんなことないです」

「嘘。坂城さんと、なにかあったんだね?」


鏑木さんの手が、頭に乗せられた。


「よしよし。かわいそうに」

「ち、違います! 何にもないですってば」


頭に乗った手を振り払って、踵を返した。


「え、えーと、客間にお布団敷いてきますから!」


< 107 / 262 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop