君にすべてを捧げよう
蓮は、何も言わない。ただ、瞼を閉じた。


『美恵を追いつめて楽しかった? あんたが好き放題遊ぶから、あの子は苦しんだのよ!
あんな夜更けに使い走りのような真似させて、何様よ!?』

『やめて!』


手を振り上げた瑞穂さんを止めたのはあたしだった。
腕にしがみつき、必死に叫ぶ。


『蓮は何も悪くない! 蓮は悪くない!』

『事情も知らないくせに何言ってんのよ!
この男が美恵を放っておくから、好き勝手してるから、美恵は死んだんだわ!」

『蓮は悪くない!!』


誰が責めても、あたしは絶対に蓮の味方だ。
こんなにも傷ついている蓮をこれ以上責める人こそが、悪だ。

ぼろぼろ泣いたまま『蓮は悪くない』と繰り返すあたしに、瑞穂さんは勢いを失った。
腕を振り払って、蓮に視線を流す。


『私はあんたを絶対に許さないから』


言い捨て、出ていく瑞穂さんに、蓮は何も答えなかった。


二人はそれ以降会ったことがないと、思っていた。
縁はそこでぷつんと切れてしまったと。


なのに、どこでどう歩み寄り、そんな関係になったんだろう。
全く、思いつかない。
蓮の口から瑞穂さんの名前が出たことなど、あれ以来一度もなかった。

でも、あたしの知らないところできっと、何かがあったのだ。


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