君にすべてを捧げよう
美恵さんには、親友とも呼べる人が一人いた。
それが、佐伯瑞穂だ。

男らしくてさばさばしてて、頭の回転が速い。
顔立ちもきりりとした正統派美人で、スタイルも抜群。
おっとりふんわりした美恵さんとは対照的な人だった。

勘もするどく、あたしと何度か会っただけで、隠していた蓮への気持ちに気付いた。
そして、親友の為なのか、牽制をかけてきた。


『美恵と仲良くしてね。めぐるちゃんと美恵が仲良くなったら、お兄ちゃん喜ぶと思う』
『美恵、いいお姉ちゃんになるわ。恋愛相談とか、きっと乗ってくれるよ』



蓮や美恵さん、瑞穂さんは大学生。
あたしはまだ中学3年生だった。

あの人からしてみれば、子供の淡い恋心だと思っていたのだろう。

そんな生半可な物じゃない。
憧れの延長線上に蓮がいるんじゃない。

わざわざそれを言うことはなかったけれど、あたしはそれから、あの人が苦手だった。


それが決定的に『嫌い』に変わったのは、美恵さんが亡くなってすぐのことだった。
蓮が入院していた病院に、瑞穂さんが乗り込んできたのだった。

病室にはたまたま、蓮とあたししかいなかった。

つかつかと歩み寄ってきた瑞穂さんは、ぼんやりと空を見つめていた蓮の頬を、いきなり打った。


『人殺し』


綺麗なアーモンド形の瞳に、宝石のような涙が浮かぶ。


『あんたが美恵を殺したんだわ』


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