君にすべてを捧げよう
日が暮れた頃、鏑木さんがやって来た。
茶色と白のコントラストの綺麗な紙袋を掲げる。


「遅くなってごめんね。あ、これお土産。地元の和菓子屋さんのおまんじゅう。
ハイネ、和菓子好きだったよね?」

「うわー、知っててくれたんですか? ありがとうございます」

「あ。今日の服可愛い。ハイネもそんなの着るんだ」

「うあ、あ、はい」


自分を見下ろす。着慣れない、アイスブルーのカシュクールワンピの裾をぎゅっと握った。

つぐみが遊びに来ていた時、あたしはポロシャツにジーンズという服装で、鏑木さんが来てもそのまま出迎えるつもりでいた。
が、30分ほど前につぐみから電話がかかってきたのだ。


『私が誕生日にプレゼントしたワンピース、あったでしょ? あれ、今の季節にぴったりだし、めぐるにすっごく似合ってたからあれに着替えなさいよ!』


勘の良い友人は、あたしがまだ鏑木さんとそこまでの関係で無いことを見抜いていたらしい。
下着の指南までされそうになり(それは必死に断ったが)、そんな甘酸っぱい会話はまるで高校時代に戻ったような錯覚を覚えた。

その心遣いのお蔭でぎりぎりまでばたばたしてしまったけれど、気持ちの切り替えができたと、思う。


「ほんと、可愛い。たまにはこれ着て店に出てよ」


引き寄せられて、こめかみに唇を寄せられる。
この柔らかな感触にも、少し慣れてきた。


「これで仕事はしにくいです」

「あー、そっか。馬渡くんもいるしなー」

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