君にすべてを捧げよう
「馬渡くんは関係ないでしょ?」

「いやいやそれが。彼の嗅覚は馬鹿にできないよ? 最近のハイネさんって艶が出たけど、カレシでもできたんすかねー、って言ってた」

「うそ!」

「いやこれが本当なんだよね」


仕事場では、鏑木さんとの関係は秘密にしている。
職場内恋愛というのは周囲にいらない気を使われるものだし、なにより仕事とプライベートはきっちり線引きしていたいからだ。
仕事に対して、なあなあなことだけはしたくない。

鏑木さんもその辺りは同じ考えなので、仕事は順調である。

稀に、頭に口づけが降ってくることがあるけれど。


「ていうか、艶とかよく分かんないんですけど」

「自覚しなくっていいよ。俺が分かればそれでいいんだし。
とにかく、こんな貴重な姿は、休日にだけお願いします」

「あー、はい」


なんだか、背中がもぞもぞする。鏑木さんはいつも恥ずかしい事ばかり言う。


「あ、えと、玄関にいても仕方ないんで、こっちにどうぞ」

「あ、はーい。お邪魔しまーす」

「すぐ夕食の支度しますね。鏑木さんはリビングで待っててくれていいですよ」

「やだ。近くで見てる」


キッチンまでついてきた鏑木さんは、ダイニングテーブルの椅子に腰かけた。
その横で、エプロンをつける。
つぐみのいうところの『エロかわいい』ものなど持ち合わせてなく、シンプルなデニム生地のものだ。


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