君にすべてを捧げよう
「あ……、はっ」


服の上から、膨らみに触れられた。
優しく指が動く。
声を零す口が、そっと塞がれた。
小さな声は、鏑木さんの中に消えていく。
それを取り戻そうとするように舌を絡めた。


と、そのキスの合間に、あたしは気付いてしまう。
鏑木さんが背にした障子の向こうに、うっすらと離れの灯りが透けている。
あの灯りには、蓮がいる。


「れ」


思わず、名を呼びそうになる。
ありえないのに、蓮に見られているような気がした。

こんな時に、今更、何を。


「……どうか、した?」


唇を薄く離して、鏑木さんが訊いた。


「どうかした? ハイネ」

「あ、い、いえ……」


何を考えてるんだろう、あたしは。
蓮のことは、もうすっぱり忘れるつもりでいたと言うのに。
蓮だって、あそこに女の人を連れ込んでいると言うのに。

意識して、はっきりと言った。


「なんでもない、です」

「そう?」


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