君にすべてを捧げよう
『店の人? 大丈夫? 最近入った子とかだったら、ねえ』

「三年前から知ってる人! あたしの上司だってば!」

『あらそう。おとーさん、詐欺じゃないって。お店の上司だってよ、職場結婚てやつ?
 ちょっと待ってね、めぐる。おとーさんに代わるわ』


母はそれで納得したらしい。向こうで受話器を受け渡す気配がした。
久しぶりの父の声。


『もしもし、めぐる?』

「父さん? 結婚詐欺でもどっきりでもないんで」

『はは、そうか。いや、心配はそこだけでなー。
大事にしてくれそうな人なのか?』


智を見た。ん? と首を傾げる様子に、笑みがこぼれた。


「うん、大事にしてくれるよ」

『それならいい。おめでとう、めぐる』

「いいの?」

『言いも悪いも、お前か選んだんだ。私たちは否定しないよ』
『おかーさんもよー! おめでとー!』


父の声の後ろで、母が叫んでいる。
少しだけ、涙が出た。


「ありがと、父さん」

『近いうちに帰るよ、二人で。その時に、いろいろ話を聞かせておくれ』

「うん」


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