君にすべてを捧げよう
つぐみが帰って、夕食を簡単に済ませたところで智から電話があった。


『ご両親、何時に空港に到着するって?』

「12時ちょっと過ぎ。ここを9時くらいに出れば余裕かな」

『分かった。じゃあ、9時に迎えに行くよ。用意しておいて』

「はーい」


智と話していると、気持ちも落ち着く。
智さえいれば、あたしは蓮を忘れ去ることができる。
そう思えるのに、一人になれば途端に不安になるのは、何故だろう。


『今日は早く寝な。おやすみ』

「おやすみ、智」


電話を切り、寝支度を整える。
日付変更線を越える前には寝ないと、明日からはハードなスケジュールなのだ。

両親と空港で落ち合った後、予約していた割烹で食事。
それから隣県に移動し、今は改装中の店舗を見てもらう。
その日は近くのホテルに宿泊し、翌日に智のご両親とあたしの両親を交えての会食。
そのあとは智と婚姻届を提出して、こっちに舞い戻り、引っ越し準備。


「あー、大変だ……」


予定を確認するだけで、ため息が漏れてしまう。
しかし、それだけ忙しい方がいいのかもしれないと思う。

空白があれば、不安に飲み込まれてしまいそうで。


置いて行くことにした自室のベッドに寝転び、大きくため息をつく。
思えば、こうして一人でこの家で過ごすのも、今夜が最後だ。


「なんか、変なの……」


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