君にすべてを捧げよう
自問した時、玄関でチャイムが鳴った。
時計を見上げれば、9時までまだ間があった。

智が、早めに来たのだろう。


「これが答え、なのにね」


独りごちる。
あたしの所へ来る人はもう、一人しかいないのだ。
どっちだとか、考える必要はないのに。

あの本さえ読まなければ、惑うことなんてなかったのに。


「はーい、今開けます」


確認せずに開けて、息を呑んだ。
そこに立っていたのは、智ではなく。


「れ、ん……」

「攫いに来た」

「え?」


まさか、そんなはず。
いるわけがないのに。

呆然としてしまったあたしを抱き寄せた蓮は、乱暴に、唇を奪った。
暴れる舌が口内を犯す。
その激しさに、息ができない。

体は強く抱き締められていて、離れることも叶わない。

果てしなく長い時間の後、蓮は唇を離した。


腕の中で、呼吸を荒くしながら、束の間見つめあう。


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