君にすべてを捧げよう
「申し込みを断らないからだろうねー」

「は、あ?」

「基本的に告白されたら断らないんだ、俺。
ハタチ未満と仕事関係は自分ルールでNGなんだけど、それ以外なら大体OK。
ほら、よく知らない子だとしても、付き合ったらすごくいい子だって可能性もあるよね? だからとりあえずOKしちゃう」

「え、えー? じゃあ、それまでに付き合ってた人はどうするんですか?」


思わず声を大きくしたあたしに対し、鏑木さんはこれがさあ、とおっとり答えた。


「これがさあ、うまいことできてるんだよね。この子は違うなーって思う頃に別の子がアプローチしてくれるんだ。どういう原理だかわからないけど、すごいよね」


すごいとかそういう話でいいのかなあ。
ちょっとズレてると思うんだけど。
しかし、その部分はとりあえずスルーすることにした。


「結局、告白してくれた子に乗り換えちゃうってことですか?」

「まあ、そういうことだねー」


あはは、と軽やかに笑いとばされたのだったが、それって何気に酷いと思うんですが、鏑木さん。
ていうか、予約制じゃなくてところてん式だったのか。
そんな仕組みなら、確かに彼女が途切れないよね。


「あれ? それならどうして今はフリーなんですか? フラれたんですか?」


推定50人だ。中には鏑木さんをフッてしまう人もいることだろう。
しかし、鏑木さんはふるふると首を横に振った。


「フラれたんじゃなくて、フッたんだよ。なんか、飽きちゃったんだよね」

「あ、飽きた?」

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