君にすべてを捧げよう
「……うーん。職人王子さま、ですかね」


しばらく考えてそう言うと、鏑木さんがふは、と噴き出した。


「意味わかんないし。職人王子ってなに?」

「うーん、うまく言えないんですけど、まあそんな感じだったんですよね」

「で、それが崩れたわけだよね? 今のイメージはどんなの?」


ううーん。今のイメージ、かあ。

さっきの話は驚いたけど、でもあたしってよくよく考えてみたら鏑木さんの内面までは知らないんだった。
勝手に優しい王子さまとか思ってただけで、鏑木さんは元々そういう性格だったってだけだよね。

じゃあ、新しい情報が一つ増えただけのことなのか。


「……職人黒王子、でいいのかなあ」

「あ、黒がついたんだ」

「だって白はないでしょう?」

「あー、それは確かに」


楽しそうにくすくすと笑う黒王子。


「ハイネって、面白いよねー」

「え、そうですか? けっこう失礼なこと言ってると思うんですけど、いいんですか」

「全然? 失礼だなんて思わないよ」


と、前方に現れた信号を指差した。


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