君にすべてを捧げよう
いそいそとタオル干しを再開していると、蓮を見送って外に出ていた鏑木さんが戻ってきた。
壁にもたれ、タバコに火をつける。


「坂城さんって、魅力的な人だねー」

「ふふ、そうですか?」


ぱん、とタオルを鳴らして、シワを伸ばす。


「話は面白いし、あと、かっこいい。渋いよね、ヒゲの似合う男って」

「あはは、普段は伸びっぱなしのぼさぼさですけどね」

「髪とヒゲに覆われて最初はよくわかんなかったけど、顔見てびっくりした。
あんなにいい顔してるんだから、前面に出せばいいのにね」

「本人にそう言ってやってください」


蓮は結構見た目のよい顔立ちをしている。
鏑木さんのような整った美しさではないが、妙な色気のある粗削りな顔だ。


「ハイネ、あんな人と二人で生活してるんだー」

「生活って言っても、長くて半月くらいですよ。書き終えたら自分のマンションに帰っちゃいますから」

「えー、半月って長いよ。ふうん、半月もあの家に二人きりかー」

「なんだか含みのある言い方ですね、鏑木さん」


視線をやると、鏑木さんはあたしの方を見てにやりと笑った。


「含んでるよ?」


< 60 / 262 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop