君にすべてを捧げよう
――あの日。

感情のままに飛び出したあたしに行先などなかった。
明け方まで公園の東屋などで雨宿りして、結局は家に帰った。


『めぐる!? どこ行ってたんだ! 朝まで帰って来なかったら警察に連絡するつもりだったんだぞ!
しかもこんなに濡れて……』


玄関先でうろうろしていた蓮が、あたしを見つけて怒鳴った。
顔を見上げると、心配そうに眉根を寄せている。

その顔を見るだけで、涙が溢れた。
蓮の顔はすっかり以前の様子を取り戻していて、こんな時でさえそれを嬉しく思う自分がいて、なんだか情けなかった。


『どうしたんだ? 何かあったのか?』

『なにも、ない……』


蓮は自分の呟きには気付いていなかった。
いや、気付いていても、あたしには関係ないと思っていたのかもしれない。
あたしは、好きで蓮の世話をしているだけの、ただのハトコなのだから。


蓮が用意してくれていた熱いお風呂に浸かり、ベッドに入ったあたしだったが、昼過ぎから熱を出した。

酷くきつかったけれど、離れにいる蓮を頼る気にならず、一人でもぞもぞと薬やアイスノンを探していたが、気付かれてしまった。


『すごい熱じゃないか! 早く言えよ!』


顔を真っ赤にしていたあたしを怒鳴り、蓮はすぐさまベッドに押し込んだ。
薬も半ば無理やりに飲まされる。


『もういいから、部屋に戻ってよ……』

『馬鹿言え。ここにいるから、寝ろ』

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