君からはもう逃げられないっ!!
着いた先は、裏校舎の裏庭にある桜の木の下。
「こんなところに桜の木があったんですね……」
「うん。知らなかった?」
「知りませんでした。そもそも、わたしまだ入学したばかりですし……」
「そうだったね」
すっかり忘れてた、と先輩は笑い、わたしは頬を膨らます。
不機嫌そうなオーラを出していると、先輩はぽんぽんとわたしの頭を撫でる。
まるで機嫌を治して? って言っているみたいな動作。
(ずるいなぁ……)
先輩にとっては何気ない動作なんだろうけど、
わたしにとってはそれはとても恥ずかしかったと同時に嬉しかった。
(先輩って、絶対穏やかなお兄さんタイプだよね……)
そう思っていると、桜の木の根元に背をかけ、そのままそこへ座った。
「ま、裏校舎は普通にあんまり使われてないから新入生は知らないのも無理はないだろうね」
「はい……って先輩、そんなところに座ったら服汚れちゃいますよ?」
「構わないよ。汚れは払い落とせば落ちる。もしそれでダメなら洗えばなんとかなるさ」
(洗えばって、それまだ、クリーニングしたばかりなんですよね?)
先輩の制服はまるで新品と同然のように綺麗でびしっとしていて、手入れが行届いていた。
普段からきちんとしている人なんだと、思った。
(これはきっと家でもきちんとしているに違いないわ! って! なんで、わたしこんなことを考えてるのよ)
一人、自問自答の一人突っ込みをしているわたしに先輩は
「っぷ。あはは。やっぱり君面白いね」
とわけの分らないことを言って大爆笑をかました。
「百面相?って言うのかな?」
「質問されても困ります」
「あはは。でも今の君はそんな感じだと思うよ」
色がいいねと、先輩が意味が分からないことをぼそりと呟いていたことに、わたしは気がつかず、
「そんなところに突っ立ってないで、君もこっちに来て座りなよ」
先輩に誘われるまま、先輩がスペースを空けてくれて、座った。