瞬きさえも忘れていた。
「そっか、やっぱ迷惑だったか」

独り言のように呟いて、ごめんね、と謝りながら彼はすんなり立ち上がった。



「でも、一言だけ言わせて貰っていい?」

軽い口調で聞かれて、

「何ですか?」

何気なく尋ね返せば、

「こういう祝いの席で、負のオーラ醸し出してんのは、あんまりよろしくないかな」

彼は天使のような優しい笑顔で、残酷な言葉を落とす。



空気の読めない人なんかじゃなかった。

バカな私。何、勘違いしちゃってんだか……。



「どんな事情があるか僕にはわからないけど。ただ、君にも楽しんで貰えたらなって思った。だってほら、せっかく来たんだし」

どこか寂しげな苦笑を浮かべ、穏やかに紡がれた言葉。


それが胸に深く刺さって痛かった。



「ああ、ごめん。責めてんじゃないよ? 下心……無かったって言ったら嘘になるし」

冗談っぽくそう言って、彼は私に向かって軽く右手を上げた。


ほんの一瞬、何か物言いたげに私を見詰め、でも結局、何も言わずに背を向けた。


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