瞬きさえも忘れていた。
なのに……。


「ここ、いいかな?」

なんて言いながら、テーブル挟んで向かい側の椅子に腰を落とした彼は、照れ臭そうな笑顔を浮かべている。


呆れるほどに空気の読めない人。

一体、どんなお仕事をしているんだろう。



「お前、何、ちゃっかり女の子くどいてんだよ?」

少し離れたところから飛んできたひやかしの言葉に、

「二次会の目的っていったら、やっぱこれだろ?」

振り返った彼は何でもないことのように返し、再び私の方へ向き直る。



「池田です」

頼んでもいないのに自己紹介を始めた彼。


「新郎の方の同僚。って言っても、彼と違ってしがない整形外科医だけどね」

そう続けて、心なしか自嘲気味にも見える笑みを見せた。



この人、医者なんだ。びっくり。

きっと患者の気持ちなんか全然汲み取れない、自己満ドクターなんだろうな。そんな風に批判的な目でしか見られない私は、心が荒んでいるのかな。



更に口を開きかける彼。


「すみません、あの、できればほっといて欲しいです」

慌ててそれを遮って、強めの語気で伝えた。


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