瞬きさえも忘れていた。
ほんの少し間をおいて、「去年も行ったから」と、苦笑に近い微笑で岩本さんは答えた。



彼女と、ですか?


聞かなくてもわかることを、敢えて聞こうとは思わなかった。



「じゃあ……6時半頃迎えに来る。それでい?」


「はい……。あ、でも岩本さんの方が近いし、私が行きましょうか?」


岩本さんはフイと顔を逸らして、フロントガラスの向こうをぼんやり眺めた。



そして、

「そういう遠慮は地味に傷付く……」

寂しげにポツリと呟き、でもまたすぐ私に視線を戻して、ニッと一瞬だけ微笑んで見せた。



「ごめんなさい」


「謝られるのも、なんかキツい」



岩本さんは我が儘だ……と思う。



どうしたらいいかわからなくて、不安な気持ちに押し潰されそうになりながら、縋る思いで岩本さんの美麗な顔を見詰めていた。


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