瞬きさえも忘れていた。
そんな私を見て、まるで悪戯に成功した悪ガキみたいにヤンチャな、でもどこか優しい笑顔を見せる岩本さん。



「やっぱ降りれないんじゃない? 車動かす?」

からかうように言って、今度は笑い声まで漏らした。



あなたが不意打ちなんかするから、ビックリし過ぎて身体が固まっちゃったんじゃない、と。

言い返してやりたいけど、どうやら唇も巧く動かせないみたい。



「あのっ……」

押し出すようにして無理矢理に発した細い声は、その場の空気にすぐに融けて消えた。



「ん?」

と、笑みを消したいつもの涼しげな表情に戻り、小首を傾げた岩本さんに、またしてもドクンと心臓が跳ね上がる。


もう、いちいちドキドキする。


寿命が縮まるんじゃないかって。そんなバカげたことすら本気で考えてしまう。



「明日、花火見に行きませんか?」


「ああ……仁名川(にながわ)のやつ? 7時半からだっけ?」


「はい。詳しいんですね?」


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