星の輝く夜空の下で

告白



夏休みが始まり春実が家に来た
お母さんは春実が来るのを心待ちにしていて夜ご飯はたこ焼きを食べたいと春実が言うから張りきって作ってた
普段、夏芽が作ってって言っても嫌がって滅多に作らないのに…
春実とお母さんで話が盛り上がって夏芽はついていけなくなった


「ふあー、お風呂気持ちよかった」

「お母さんてあんなに喋るんだ…」


夏芽は小さい頃はおしゃべりだったが、中学生くらいから会話が減っていた


「ほんとはいっぱい喋りたいんじゃない?夏芽がもっと話しかければいいんだよ」

「うーん、幼稚園くらいの時は口が達者だったんだけどな」

「あ、そ」


夏芽は家で前髪を結んでいる
春実は夏芽の額の傷に気づいた


「その傷…本当は何?」

「え?あぁこれ?」


夏芽は額に触れた


「うん。元ヤンの時に出来た唯一の傷って伝説しか知らないから本当はどうして出来たのかな?って」

「伝説って…この傷は幼稚園生の時、車で寝てたら隣から車が突っ込んできて…」


夏芽は何かを思いだしかけた


「その時の傷なんだ。目に刺さんなくて良かったよね」

「…」

「…夏芽?」


夏芽は我に返った


「う、うん。一歩間違えれば失明してたって」

「ひゃー、危ない」


あの時の事故の記憶はほとんどなかった
そういえばぶつかってきた車に乗ってた人は無事だったのだろうか
ぶつかってきた原因は飲酒運転なのか、アクセルとブレーキの踏み間違いなのか、それとももっと他の理由があったのか
あの日から生活は特に変わらなかったけど
大きな問題とか全くなかったのか
なんて今さら事故のことをぐるぐる頭の中を巡らせていた


「明日はなにしよっか?」

「ゲームセンター行こっか」

「ゲームセンター?」

「今度、辻本くんがUFOキャッチャーで何かとってくれるんだって」

「じゃ、行く!!」

「そんなに対抗心燃やさなくても…。そういえばさ、はるの彼氏はどんな人?」

「あれ、彼氏じゃないよ」

「え!?」

「二人で映画見に行こうって言うからホラー映画見に行ったのね。でも終わったら失神してたんだよ。ありえない」

「へー」

「みんな勘違いしてるじゃん?可愛い子は可愛いふわふわしたものが好き♪みたいな。だからいってやったのよ。見た目で人を判断するとこういう目に遇うんだよって。そしたら、すいませんでしたって逃げてった」

「どういう目だよ…」

「ホラー好きじゃないとダメだよ。趣味あわない」

「ふーん」

「本当はダブルデートがしたかったんだけどまた今度ね」

「うん」


夏芽は微笑んだ


「ダメだよ。夏芽が笑ったら明日雨降るじゃん」

「だからあたしのせいじゃないっつてんの!!つーか笑えって言ったのはるだからね」

「ごめん。いっぱい笑っていいから許して」

「やだ。寝る」

「なーつーめー」


賑やかな夜はちょっとだけ長く続いた
もちろん次の日は雨が降ったが二人は幸せな時間を過ごしていたと思う


夏芽にとって高校生最後の夏休みはかつてない幸せで溢れていた


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