あの空の音を、君に。
しばらく、空を見上げてぼーっとしていた。
意識が私の中に戻ってきたのは、私の肩をトントンと誰かさんに叩かれたからだった。
私は渋々隣を見た。
「――何?」
「伊月って登録してくれた?」
とびきりの笑顔でそういう彼。
どこからそんなキラッキラした笑顔が飛び出してくるんだろうか。
昨日、心の底から笑えないなんていったくせに。
「してないけど」
私がそう返事をしたら、岡村さんのカーディガンに包まれた腕がにゅっと伸びてきた。
反射的に目をつぶったのはすでに遅く、おでこにさっきと同じ衝撃が走った。
「いったぁ……」
「言ったじゃん。伊月って登録しないとデコピンするって」
目を開くと、いたずらが成功した小さな子みたいな表情の彼が、嬉しそうに笑っていた。