禍津姫戦記
 必死に叫ぶハバキの声に、姫夜はうっすらと眼を開いた。

「ヒメヤ……愛しい……子……母と、ともに……」

 銀の糸は猛烈な勢いで絡みつき、姫夜の体を繭のように覆いつくそうとしていた。
 ハバキは飛びついて、黒曜石の刀で繭を切り裂こうとした。だが銀の糸は雨のようにハバキの上にも降りそそぎ、二人をもろともに包みこもうとしていた。
< 329 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop