溺愛MOON
「ふっ……。うっく……」


自分の部屋に帰って頭から布団を被り、声を殺して泣いた。


――ホラね、現実を見なさい。


誰かの声が聞こえた気がした。





次の日、かぐやの部屋には行かなかった。

意地を張ってる自分が馬鹿かもしれないって思う。


こうしてる間にもかぐやは居なくなっちゃうかもしれないのに。

せめて残された時間ぐらい、一緒に過ごせばいいのに。


『コクればいいじゃない。島出てからも連絡取りましょうって』

「……言えるわけないじゃん。携帯隠されたのに」

『……実は妻子持ちだったりして!』


電波の向こうからの仁美の声に返す言葉がない。

悪い方向へ想像すればドン底なんてない。
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