溺愛MOON
「違うな、軟禁か」

「やっぱりかぐや姫だったんだ!?」

「……なんで」


しつこい私に彼は半ば呆れたような、諦めたような目を向けた。


「かぐや姫はねぇ、月で罪を犯したから人間界に堕とされちゃったんだよ」

「……あー」


彼はかぐや姫という童話のあらすじを思い出したらしかった。


「……さっさと帰れよ」


否定しないんだ。

また少し私の胸は躍り出した。


月から来た王子様かもしれない。

なんて言ったらまた嫌な顔されるんだろうけど。


「嫌だよ。家にはネズミが出るの。それに雨漏りも」

「ネズミ?」

「うん。壁がガタガタうるさいの」


彼はフッと笑って「腹減ってんじゃない?」と言った。
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