ソラナミダ
「…そっか…。よかったですね。」


「…あ。忘れる所だった。コレ、大した物じゃないんだけど…どうぞ。」


彼は、紙袋から箱を取り出すと…、私の目の前に差し出した。


「良かったら食べて。」


「…ありがとう!」


「……『ありがとう』はこっちなのに。」


ハルミくんは眉を下げて笑う。


思いのほか、あどけない表情で…。


「じゃあ、俺はこれで…。」


「あ、うん。はい…。」


「…ねえ。」


「え?」


「…平瀬さんて、テレビ見る?」


「…テレビ…?ああ、見ますよ。CMとか。」


「……番組とかじゃなくて?珍しいね。」


「う~ん、朝のワイドショーくらいかも。」


「…そっか。」


「…なんで?」


「寝癖…。この時間に寝てるからさ。テレビ、ゴールデンタイムじゃん?俺、インターホン結構鳴らしたよ。」


「…あ~……。昨日はほぼ徹夜だったし、珍しく定時で帰れたから…。もう、爆睡だったんです。」



「仕事…、忙しいんだね。」



「いや…、要領悪いだけ。」


「なるほど……、うん、やっぱ見事な寝癖。」


「やだ…。すみません。」


慌ててアタマを抑える。


「はははっ!今更遅いって。」


「確かに、今更変わるもんじゃないか。」


「………眼鏡…、似合ってるね。」


「…はい?」



「…でも…、ない方が絶対いい。」



「…あはは…。いつもコンタクトだから疲れ目。これは…必需品。」



「…ふーん。………かわいいのに。」




「…はい?」



.「『かわいい』。」





「……。ハルミさん。そのネックレス、大事にしてくださいね。」



私は彼を玄関から押し出すと、勢いよくドアを閉めた。




「そんなの言われても、私にはどうでもいいことなのに…。」




『かわいいのに』…


だから何?


…その後には、いつも否定の言葉が隠されている。



昔からそうだった…。


次に言われる言葉は、いつも同じ。



『かわいいのに…もったいない。』



もったいないってなに?


私は、私…。


素のままでいることが『もったいない』の?



部屋に戻り、一息ついた。


そして…缶チューハイを片手に、そっとベランダに出る。


「はあ~っ…。」



ぼんやりと、星空を見上げる。



ハルミさんは、何も悪くないのに…。


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