ソラナミダ
夜道を二人……
肩を並べて歩く。
博信は無言のまま。
なにも……
しゃべらない。
「……博信……。」
「……ん?」
「私、酔ってないよ。」
「わかってる。…言ったろ?二人で抜け出そうって。」
「…………。」
だから……、
あんな嘘を?
「…あんなの口実。最近忙しくてゆっくりできなかったから……、どうしても今夜は一緒にいたかった。」
「…………!」
一緒に……。
……。いつもいつも…そう言ってくれるのは…
博信から。
でも。
今なら言える……、
ちゃんと私の気持ちも伝えなくちゃ。
そう、思っていたのに…。
「若者らしく……、手でも繋ぐか。」
「……うん。」
不意打ち。
まるで付き合いたてのカップルみたいに、なんとなくぎこちなく繋がれた手と手……。
「……博信…、あのっ……」
「…ん?」
「…………。あれ……、携帯?」
タイミング良く……
私の携帯が、着信を知らせていた。
「………ごめん、えっと……」
「……?電話出てからにしたら?」
「…うん……。」
こんな時に…。
どこの、誰よ…?
「…………!」
携帯に刻まれた名前。
………晴海くん……。
「…どうした?出ないの?」
「………うん。多分急ぎの用とかじゃないから。」
私は……携帯を閉じる。
でも…。
何だろう。
いつもメールで連絡くれるのに……?
「……タクシー、つかまえるか。」
「うん、そうだね。」
……もやもやする。
何か……あったのかな。
晴海くんが電話をくれる時……、
そういう時に限って…
いつも、すれ違う。
彼の想いを受け損なってしまう。
そして、
また………
携帯が鳴り始めた。
「……誰か知らないけど…出てやったら?」
「…………。」
目の前に……
タクシーが停まった。
「…すみません、ちょっと待ってもらえますか?」
博信が、運転手に…そう告げた。
それから私に……
目配せする。