ソラナミダ
「…お前とこんな話するなんてな。大人になったもんだ。」
「………。」
「馬鹿にしてるんじゃないぞ。恋愛して、女は磨かれていくんだから。」
「……はい。」
いつもの説教なのに……
心にじん…と染み込んでいく。
「…そもそも正解なんてないだろう、恋愛に。今現状として…駆け引きしながら答えに向かっていくもんだから。何通りもあるだろう、その先に。別れを選ぶ者もいる。結婚する者もいる。現状維持を望む者もいる。ただ……」
「……『ただ』?」
「お前がから回ると思うなら、二人の恋愛の仕方が違うだけ。」
「………。」
「…結果は見えない。だから楽しくも、苦しくもある。それでも一緒にいたいなら……それでいいだろう。」
「…………。」
「お前はアレだ。」
「『アレ』?」
「愛されるよりも…、愛したいタイプ。」
「ええっ。」
「そうか…、そういうことだなあ、うん。」
待って。一人で納得しちゃってるけど……
なにゆえ?!
「ん?そんな題名の歌があったな……。」
「…………。」
確かに……。
「よし、平瀬!二次会はカラオケだ!こういう時は歌ってスカッとするのが一番!」
背中を思い切りたたかれて…
木村さんは豪快に笑う。
励ましてくれてるつもり……
かな?!
「…平瀬!」
「………えっ…?」
気づけばすぐ側に……
博信がいた。
「…飲みすぎ?具合悪いのか?」
「…え?……は?」
突然の出来事に……
私はうまく答えられない。
「…全然飲んでないじゃないか。具合悪いなら最初から言ってくれれば…。」
「い、いやいや…、元気ですって!」
「木村さん。俺、平瀬家まで送っていきますので……後はよろしくお願いします。」
ええっ?!
「おー、そうか。気をつけて。」
サラリと受け流す木村さん。
なのに……
口の端が笑ってるし!
相談相手……
間違えたかしら?
「じゃあ、また明日!お先に失礼します。」
「…し、失礼しまーす……。」
何故か病人扱いを受けながら……
私たちは、酒場を後にした。