ソラナミダ
申し訳ない気持ちで…、
私は通話ボタンを押した。




「…も、もしもし…?」



『ごめん、平瀬さん。今忙しいよね。』



晴海くんは早口で……

何か焦っている様子。



「ううん。今会社の飲み会終わった帰り。」


『またお酒?強いな。』



「…いーじゃん、息抜きだもん。それより…珍しいね。どうした?」



『頼みが…あるんだ。』



……頼み……?



『俺の部屋の前にいる奴を…帰るように説得して欲しいんだ。』



「……はい??」



『俺、今撮影中で……多分明日になんないと帰れない。だから……、頼めるの、平瀬さんしかいない。』




「…ま、待ってよ。晴海くんの知り合いとはいえ、見ず知らずの私じゃあ説得もなにも……。あ。鷲尾さんに頼めばいーじゃん。」



『それだけは…、絶対ダメ。』


「……?なぜ……?」



『…ごめん。会えばわかる。無理なお願いしてるのはわかってる。けど……』



「………。それは…、私じゃないとダメなの?」




『……うん。』



「……………。」



『もしかして、今……久住さんと一緒?』



「………!」



『そっか。なら……どうしようもないね。ごめん、突然。……じゃあ。』



「待って!こっちは……、大丈夫。話せばわかってくれるから。それより……よっぽど困ってるんでしょ?私を頼るなんて。」



『………。いくらメールしても、電話しても、出ようとしない。』



「……そう。」



『……ホント…、ごめん。』



「いーから。困った時は…お互い様でしょ。近所のよしみ。」」



『ああ……。』



「じゃあ、今すぐ帰ってみるから!後で連絡する。」




『…ありがとう……わこ。』



「……………!」




切れた電話の向こうから。


名前を呼ぶ声が……


こだましていた。






一体何がどういう訳かはわからない。


でも……

晴海くんが、私を頼っている……!!








「……博信……、ごめん。」



「……え?」



「どうしても、家に帰らなければならなくなりました。」



「………。何かあったの?」



「……ああ、うん…。ちょっとね。心配ないんだけどさ。」





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