ソラナミダ
彼女が話したことは……
耳を疑いたくなる話もあった。
辛い生い立ちに、
芸能界という厳しい大人社会で生きてきた彼女に……
頼れる相手などいなかった。
ただ、一人を除いては……。
「彼は私が呼べばいつも飛んできてくれました。何よりも、私を優先してくれて……。私はそれを愛されているのだと、勘違いしていたんだと思います。」
「……………。」
「あの人の優しさに…私は甘えてしまっていたんです。いつもいつも助けてくれた。それが当たり前で……、気づいたら、自分の足では立てなくなっていました。彼の今の立場では、間違いなく私は重荷になっています。」
「……でも……いちかさん、すごいじゃないですか。CM数も、ドラマだって沢山出演してて……」
「それは全て……、会社の力です。上に取り入って、気に入ってもらって、嫌なことも……いずれ自分の為になると信じてやってきたんです。少しでも、彼に認めてもらいたくて……。」
「…………。」
「……逆効果でした。彼はどんどん私から離れていっています。努力はみを結ぶなんて………嘘です。もう、何もかもが嫌になって自暴自棄になりました。そしたら……、『そんなんだったら女優やめろ』って…とうとう社長にまで見放されて……。」
「……いちかさん……。」
「……愚痴ばかりですね。ごめんなさい。」
「……いえ……。いちかさんの話、何だか他人事じゃないなあって。仕事と恋の両立ができなくて、私もちょうど今……悩んでいたので…。あ。ていっても、私のはかる~い悩みで、比べものになんてならないんだけど…。」
「……ひょっとして…久住さん?」
「……やっぱり…ばれてました?」
「だって、羨ましいと思いましたから。久住さんて素敵ですよね。」
「……そう…ですか?」
「…頭も良くて、気遣いできて。あの…平瀬さんが転んだ時なんて、愛を感じました。」
「愛?!いやいや…あんなドジ踏むのは日常茶飯事なので…呆れてましたよ。」
「…そうは見えませんでしたよ?」
「……う~ん…?ねえ、それより……私は逆にいちかさんがキラキラしてて…すっごいオーラがでていて…。圧倒されちゃいました。」
「ええ?!そんなお世辞なんていいのに…」」