ソラナミダ
「…お世辞なんかじゃありません!」



私はつい興奮して…テーブルを叩いた。



びっくりしているいちかさんは……



「……あははっ、びっくりした~!」



ケラケラと声を上げて笑った。



「…なりたくても…いちかさんみたいに、こんな魅力に溢れた女性にはなれません。世の中の女性の…、いや、男性もですが、憧れの的なんですから!……夢を…与えてくれる存在なんですから、そんな自分を卑下しないで下さい。さみしいじゃないですか……。」



「……平瀬さん……。」









不思議だった。








天使みたいで、ふわふわした…憧れの存在の人が。


今こうして自分と話していることも……



悩みを抱えて、同世代の私達と同じであるかのように……


近くに感じてしまうことも。








「…結局はさ、たった一人に……、彼に認めてもらえればそれだけでいいって話なんだけどね。社長との喧嘩なんて二の次なのかも!」






夢中になって「彼」の話をするいちかさんは……



テレビで見るよりも、どんな時よりも、



かわいかった……。





その「彼」はなぜ……




こんなに素敵な、いちかさんを遠ざけているのだろう。




晴海くんの姿が……



時折、脳裏を過ぎった。







今にして思えば……



深夜に匿った時も…彼はいちかさんに会ったのだろう。




二人でいるときは、晴海くんは……




どんな顔をしているんだろう。










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