ソラナミダ
ぷつりと……



頭の奥で、何かが……


切れた。







「私が一般人だから?確かにさ、芸能人の大変さとか、業界の仕組みとか、何もわからないよ?だけど…、いちかさん、泣いてた。辛そうだった。それを解ろうとして、理解しようとして…何が悪いの?晴海くんだってさ、人のプライベートにずかずかと入りこんで来るくせに、自分のことになると壁つくってだんまりきめこんで…そんなの、ひどいよ。人のこと…巻き込んでおいて、用が済めば『部外者』扱い?そんな血も通ってない冷たい男だった?…私が知ってる晴海くんじゃないみたい。」




息もつかず、
晴海くんの顔も見ず……




一気にまくし立てた後には。



押し寄せるのは………




後悔だけ。






「……ご、ごめん。言い過ぎた。」




「……………。」





月夜に照らされて……



うっすらと笑う晴海くんの横顔は。




怒っているのか……


憂いているのか……



わからないけれど。






次の瞬間……




「わこが知ってる俺って何……?」



私の腕をギュッと掴んで……



驚くくらいに冷たい瞳で……




私を見た。





「…………え?」




「……知らないくせに。」




「……晴海……くん?痛いよ…、離して。」




「………。」




「……離してってば!!」




頬を叩くかわいた音が……



夜空に響いた。





まさか自分が晴海くんを……


叩いてしまうなんて。




だって彼が本当に……




まるで別人のようで……




腕を掴まれるそれだけで…、
闇に囚われていくような恐怖が……






襲ってきたんだ。





途端に、彼は……






「……ごめん……。」



小さく小さく呟いて……




私の前に、手を差し出した。





「……………?」





「……手を……貸して。」




「……なぜ……?」




「……なんでだろう。わこに拒絶されるのは……辛い。」




「…でも晴海くんが…、先に私を拒否した。」



「…してない。」



「…した。」



「……してない!」



「したよ!」




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