ソラナミダ
「………寝れない………。」
いつの間にか、すやすやと寝息をたてているいちかさんをよそに……
私は、時計の秒針をじっと見つめていた。
2時………。
水でも飲もうかと、キッチンに向かったところで……
玄関の外から、物音がした。
しばらくすると……
携帯が鳴る。
メールの相手は、晴海くん。
「……………。」
いちかさんは……
うん、大丈夫。
ぐっすり…寝ている。
メールを返信。
それから私は足を忍ばせて……
そっと、ベランダへと出た。
それから数秒後……。
「まだ…起きてたんだ。」
隣りのベランダから……
晴海くんが、顔を出した。
「…ちょっとだけそっちに行ってもいい?」
「えっ…。それはマズイ……って、……………あ~あ…。」
……来ちゃった。
「…いちかさん、今そこで寝てるの。」
「え。マジで?帰ったんじゃ……」
「…だから、マズイからそっちに戻って。」
「…寝てるんだろ?大丈夫じゃん?げーのーじんは睡眠命。」
「……もう、ちょっとは危機感持ってよね。」
「…カーテンもしまってて、窓もしまってるし……。うん、大丈夫。」
「…………。」
「……驚かせたよな。」
「………うん。まさか、いちかさんがいるなんて。彼女って…いちかさんのことだったんだね。」
「まあ…。」
煮えきらない返事。
「……どうして…会ってあげないの?」
「…あいつに…聞いたんだ?」
「うん……。」
「…あいつの為になんねーからな。あいつの事務所は恋愛ご法度。ましてや俺と噂になったら…ますますロクなことにならない。」
「なんで……?人気俳優同士、話題にも憧れにもなると思うけど…」
「…それとは違う意味で…、話題になる。」
「………?」
「わこには関係ない話だよ。とにかく…、ありがとう。」
関係ないって……。
人を巻き込んでおいて、なに……この疎外感…。