ソラナミダ
給湯室でさっき食べ損ねたカップラーメンにお湯を入れる。
それから、慎重に……
自分のデスクへと運んで行った。
「お。何ですか、ソレ。初めて見るカップ麺。」
カップ麺が出来上がるまでの間、私がデスクで呆けていると。
そこにひょっこり顔を出したのは…都築くん。
「あ…、コレ?スーパーで98円だったからつい。」
「へぇ。そりゃ安いですね。」
「いざという時の、マイ備蓄品。」
「…………。ええーと…、それはつまり、今が『いざというとき』?」
「………。今日はランチに行こうと思ってたから……。」
「……あの、余計なことかもしれないですけど、何か…ありましたか?」
「…え?」
「珍しいですよね、ここでこんな風に食事とろうって辺りが。それに…、元気がない。」
「……。……そう見える?」
「見えますね。まだ朝遅刻したこと気にしてるんスか?それとも…、恋煩い?」
「…………。都築くんてさ、さり気に女性の変化に敏感だよね。」
気づかなくていいことまで…、気づいてしまう。
去年一年は特に…周囲に気を配っていたから、それが目を磨いてしまったのかもしれない。
「……。そういえば、佐倉さんも、今朝からそんな顔してましたね。」
「え?」
美帆も…?
「……らしくないですよ、二人共。二人の掛け合いを盗み聞くのが…俺の日々の楽しみなんスから。早いとこキンチョー状態といて下さいよ?」
「え。…緊張状態?」
「……ちょっと隣り、失礼します。」
都築くんは、私の隣りのデスクの椅子を借りて……、ガラガラと、その距離を縮めてくる。
そして、囁くようにして…
「…多分、誤解っすよ。だから…ちゃんと話聞いた方がいいですよ。」
そう、耳打ちしてきた。
「……『誤解』?『話』…?」
「…あれ?原因は久住さんなんでしょう?」
「……?何で、そう思うの?」
朝からのぎこちないやり取り、素っ気ない態度。
それらが何故…、そこに結びつくの?
「だって、昨夜平瀬さん帰った後…、戻ってきた久住さんとずっとツーショットだったし、いつの間にか二人共消えちゃうし。」
「……え…?」
「……?あれ、俺…余計なこと言いました?」
「ううん。でも、そっか。そうなんだ…。」