ソラナミダ
「それはご丁寧にわざわざ…。ハルミ、きっと喜びます。大切にしているものですから。」


「…なら良かったです。では、私はこれで…。」


軽く会釈し、立ち去ろうとドアを閉める。


…が、


「すみません!あの…お名前聞いてもよろしいですか!?」


鷲尾さんが慌てた様子で、玄関外に出てきた。


「…?…平瀬です。」



「いや、差し支えなければ下のお名前を…。」


「…『わこ』です。」


「『平瀬わこ』さんですね。すみません、ありがとうございます。コレ、ハルミに間違いなく渡しておきますから…。」


にこりと微笑んだ鷲尾さんの眉が、垂れ下がっていて……


このネックレスが、どんなに大切なものだったのかが窺い知れた。




大切なもの……か…。




部屋に戻った私は、写真立ての中で微笑む母と父を見つめた。






「…お母さん。この部屋、広すぎるよ…。」






けれど、誰もいないこの広い部屋に…


私の小さな声は、静かに響いて消えていくだけだった。



私はそのままベッドに潜りこみ……


深い、眠りについた。



静寂な夜…。




ピンポーン…




ピンポーン……



アタマの中で、音が鳴り響く。



「…え?」


ぼやけた視界の中、壁掛け時計で時間を確認する。


時間は9時。


どうやら2時間程寝ていたらしい。



ーと、



ピンポーン…



インターホンが鳴った。



ふらふらと立ち上がると、急いでモニターを確認する。


「はい。」


映ったのは…


ニット帽を深めにかぶって俯く男の人だった。


…不審者!?


「…どなたですか?」


『隣りの部屋に住んでる【ハルミ】と申します。』


「……ハルミ?…ああ!やだ、すみません。ちょっとお待ち下さい。今、出ますから…。」


【ハルミ】って…
女の人じゃなかったんだ。




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