〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 絆の声はいつもより気合が入っている。

 お互いにハイタッチする。

 珠理の心にみんなの気合が、グローブ越しに伝わる。

「落ち着いていこう。
 大丈夫、困ったときはうちらがいるよ。」

 絆に背中を叩かれた。
 珠理の今の状況を知った上なのか。

 珠理が絆と目を合わせると、絆がにこっと笑った。

 
 相手チームもそれぞれのポジションにつく。

 コイントスの結果、城崎ドルフィンガールズがボールを蹴って始めることに。

 センターサークル内には、満とリエとボールしかない。

 珠理は自分たちが守るゴール前で、二人の背中を見つめる。

 目の前には、梗子とあかりがいる。


 ぴーぃ~♪

 笛の合図で満が来未へ、自分たちが攻める方向へボールを蹴り、キックオフ、始まった。

 珠理の記憶はここから消えた。

 途中、あわや失点しそうになったところや、どんな指示を出したのか。

 もう、記憶がない。



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