〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 コートにいる選手は、みんなそれぞれのチームのベンチのもとへ。

 ベンチにいる選手は、試合に出た選手に水筒とタオルを渡す。

 今日は暑いから、皆の水筒の減りが早い。珠理だって例外ではない。

「ごめん水筒開けて。」

 珠理は誰かに、水筒のふたを開けてくれるように頼む。
 理由はグローブで指が大きくなって、開けにくいから。

 すると伊理安が開けてくれた。

 珠理はものすごい速さで、水筒に入ってたスポーツドリンクの半分ほどを飲み干した。


 飲んだ後に出るため息。

 珠理の思いすべてが詰まっている。

 ここ最近の不調。
 その原因は、将来に対する不安。

 なでしこになりたいがゆえの苦しみ。

 前から、簡単になれるとは思っていない。
 努力が何よりも大事だと思っている。

 でも、心のどこかでは、最短でなでしこになりたいと思っている。

 最短、いや、楽になりたいと思っている。

 いや、楽に確実になりたいと思っている。



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