〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 人間は、楽な方へ、楽な方へと流れたくなる。

 今まで珠理は、楽な方に流れまいと頑張ってきた。

 だが、珠理は人間。

 心のどこかで楽に、なでしこになれる道を探そうとしていた。

 しかし、それを考えたら、逆に難しく感じ、苦しくなってきた。それが、今までの将来への悩みの根本的な原因だったのではないか。


 また一口飲んで、さっきより長いため息。

 だいぶ呼吸が整ってきた。

 落ち着いて周りの様子を見れば、何人かのチームメートはしゃべっている。
 たぶん、試合に関係しているだろう。


 周りの様子を見ながら、ベンチに座った。

 ふと、考えがよぎった。

 なでしこになる夢、諦めるのが一番いい。

 確かに、楽かもしれない。

 プレーだけではなく、珠理の学校生活も楽かもしれない。

 いやいやいや、絶対諦めたくない。

 なでしこになるために今まで頑張ってきた。

 そう、すべてはこの夢をかなえるために。



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