〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 こうしているうちに、体育館に着いた。

 靴を玄関に備え付けられている下駄箱の中に入れ、荷物をすぐ近くのロッカーに入れ、体育館履きを履いて・・・

「こんにちは。」

 コートに入る前に監督に挨拶する。

「練習していいぞ。」
「はい。」

 こうして中に入れるわけだ。


 珠理は左手に持っていた、水色のヘアバンドを付ける。

 これは珠理にとって、ただのヘアバンドではない。

 珠理をサッカーの世界の住人に変える、魔法の道具。

 このヘアバンドを付ければ、現実世界で起こったことをすべてを忘れる。

 おでこ、両耳、頭にヘアバンドの感触が伝わった。
 その瞬間、珠理は、サッカーの世界の住人になった。


「監督、キーパー練していいですか。」

「アップ(準備体操)していれば、軽いキャッチングだったらいいぞ。」

「はい。ありがとうございました。」

 勝手にゴールキーパーの練習はしてはいけない。

 派手なことをすると、怪我をすることがあるから。

 たとえ自主練でも、監督がいなければゴールキーパーの練習はできない。っというわけだ。





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