〔完〕 うち、なでしこになるんだから
『お願いします。』

「では、今度の県大会に向けた練習試合でのポジションを発表する。
 今度の県大会も、基本発表するポジションでいくから。」

『はい。』

 三年生にとっては、今度の県大会こそ『全国U-15地域サッカークラブ大会』が最後の公式戦となる。

 今までお世話になった先輩に、ゴールキーパーとして恩返ししたいと思うと、ほんの少しだけ珠理に緊張が走る。
 監督は黒い画板に張っている紙を、険しい表情で見る。


「ゴールキーパー。」

 珠理はまるで静電気に触れたような心地がした。

「玉川珠理。」
「はい。」

 とりあえず一安心。

「秋田ゆう乃。」
「はい。」

「野々村春世。」
「はい。」

「ゴールキーパーは以上。」
「はい。」

 監督は時々、たとえゴールキーパーであろうどもポジションを変えることがある。

 珠理は、どうしてもゴールキーパーがやりたい。
 サッカー女子日本代表のゴールキーパーになりたいから。
 
 だから、練習試合もゴールキーパーでできてよかったと一安心。

 でも、油断大敵。出れるかどうかは、完全に保証できない。
 

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