〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 これからすること。

 十本シュートを立て続けに浴びる。

 別にこれはいじめではない。練習だ。

 とにかく、どんな種類のシュートでも、セットプレーでもいいから、一人一セット十本浴びる。

 春世に緊張が走る。


「よーいスタート!」

 珠理の掛け声で始まった。
 開始早々ボールを蹴ったのはみずき。
 みずきのミドルシュートは勢いがなく、余裕で春世は取った。


 珠理とゆう乃はこぼれたボールを拾う係。

 コートに戻すかどうかは、状況による。

 このボール拾いも実は大事。

 状況判断を養えるっとコーチはよく言う。


 満のロングパス。


――あっ、ボールが五つしかない。
   誰かが、いらないから捨てたかも。どこにあるんだろう。――

 そう思っているうちに、未撫がそれにヘディングで合わせた。

 春世はパンチングし、コートの外に出た。

 珠理が走って取る。

 まだ二本しかシュート打ってないから、満にボールを渡した。それが珠理のスローインから満がシュートを打ったように見える。

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