〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 こころは珠理が送ったボールをシュートで返した。

 珠理から六・七メートルの距離を、転がるようなシュートを打った。

 珠理は動じない。

 しっかり構えて、手の中に収まった。

 勢いがあったが、落ち着いていればしっかり取れる。


 って、いつの間にか未撫がボールを持っている。

 慌ててボールを投げる。かなり適当に投げた。

 未撫がシュート打ってきた。

 五メートルほどの距離で、かなり勢いがあり、高さもある。ジャンプしないと珠理の頭上を越してしまう。頭上を越してゴールに吸い込まれてしまう。

 かといって、ジャンプしてキャッチできない。キャッチしたら完全に取れずに、はじいてしまうから。パンチングの五文字がよぎる前に・・・。

 両手をそろえてグーを作り、ジャンプして指の第一関節から第二関節の間にボールを当てて、パンチする。

 うまくいったのか、遠くまで飛んだ。

「あっ、すみません。」

 ゴールキーパー以外のポジションが、練習しているゾーンに入ってしまった。


< 63 / 213 >

この作品をシェア

pagetop