Wild Rock
涙の洗礼~マリアの過去編~


 あの頃を思い出すなんて、どうかしているな…。


 外を見れば、稲妻が空を翔けぬけ、雷の音が轟いている。


 あぁ…。この音のせいか…。

 あの方が殺されたときも、こんな耳鳴りがするほどの雷に降られながら、あたしの手の中で、冷たくなっていったんだ……。



 あれは8年前。

 あたしがまだ10歳になったばかりのころだった。

 教会の門の所に捨てられていた赤ん坊のあたしを拾い、あの時まで育ててくれた、先代。

 総てのシスターの中で、唯一あたしが慕った女性であり、母であり、憧れたオルレアンの聖女。

 マリア=ダルク。




 夏の始まり。

 あたしは院長に言われて教会のイス磨きをしていた。

 先代に育てられたからだとか、ナマイキだとか、大人のクセに、なんでそんなバカみたいな嫉妬してんだか。

 そんな時からシスター達にイジメにあっていた。

 世ではシスターは悪を祈りで排除し、更正させているというが、中身は外の奴らと一緒で、代わり映えはない。

 
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