Wild Rock


 小高い丘の上に行き、アマンダの墓を作る。
 ユリの花と、赤ワインを添えて。

 まだ夜が明けぬ、その丘。

 金に瞬く星が、その歌を待っているかのように最後の光りを放つ。

「レクイエムくらい歌ってやれよ。ダチだったんだろ?」

 フェンリルがタバコに火を点けながら言う。

「夜は魔が潜む。今歌えば、アマンダは魔の番人に喰われる。声が、聞こえたんだ…」

『声?』

 三人は声を合わせて耳を澄ますが、風によって擦れる葉の音と小さな虫の声が聞こえるだけ。

「厄介なものを持ったものだ。ルーシュと同じように、な?」


 マリアの言葉に、二人はルーシュを見下ろした。

 うっすらと、東の空が明るくなる。

 マリアはポーチからベールを取り出し、アマンダを送る歌を歌う。

 歌うは、アヴェマリア。

 朝日が、小高い丘に射す。

 女神の声を持つマリアの歌が、太陽とともに輝きを増す。

 一切の迷いも、汚れも打ち消してくれるような、死さえも乗り越えられる、甘美な声。

 かすかに声が震える。

 あの強く、気高いマリアが友を送るために 泣いている。

 三人はマリアの背中を見つめながら誓った。

 もうこの汚れなき、儚い華を泣かせないように、この先に何があろうと、自分の命を投げうってでも守り抜こうと……。





 
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