GOLDMOON~美しき獣の赤い糸の花嫁~
「三郎さんの気持ちは嬉しいでありんす。でも、わっちの年季は遠い先。三郎さんがわっちの身請け金を払ってくれるんであるんすか?」



愛染の言葉は具体的だった。



愛染は上級の遊女。身請け金の額は途轍もなく大きい。

呉服屋の跡取りである俺でも容易に出せる金額ではない。


「・・・『一人の客に惚れた腫れたご法度…』わっちを育ててくれはった姉さんの言葉でありんす」




「愛…染…」


「あい」


俺の呼びかけに応える愛染の黒い瞳は潤んでいた。


紅で彩られた唇をキュッと噛み締め、涙を堪える。




俺は愛染に良かれと思って口にした言葉なのに。


愛染を苦しめているーーー・・・







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