横で眠る「あなた」【未完】
第13章
理先輩は、中学校に週2回から3回は、顔を出してくれた。
高等部には、顔を出しにくい私への配慮だと思うと、とっても嬉しかった。
奏先輩は、部活が始まって、来なくなっていたけれど、ファミレスで会った先輩の友人の1人が来てくれるようになっていた。

そんなある日、理先輩から自治会に入ったと報告を受けた。
自治会活動は大変だと聞いたことがあったから、中等部に来るのも難しいかもしれないと思った。
理先輩にそう言うと「1年のうちはそんなに、忙しくないから大丈夫。今までと変わらないよ。」と言う。
その言葉が、その頃の私には嬉しくて仕方がない言葉だった。

でも、心に引っかかる思い。
あっさりと、自治会メンバーに入れる理先輩の素性。

そのことを知ったのは、3年生の1学期が終わり、夏休みに入ろうとした直前だった。

理先輩の素性を知ることを、怖くて、理先輩本人に聞くことも、恵子や奏先輩にも聞いてこなかった。
そのことを、本当に悔やむ出来事だった。

救いは、仲の良かった健二から教えられたという事だ。
それじゃなければ、もっと救いがないと思ってしまうところだった。

いつものように、放課後工芸室に向かおうとしていると、健二に呼び止められた。
「しばらく、理先輩は工芸室来れないよ。」と健二が言い出した。
健二のお姉さんの直子先輩と理先輩は同じ学年だから、何か知ってるのかも知れないと思って、「理先輩に何かあったの?」と聞くと、「理先輩のお祖父さんが亡くなって、お葬式があるんだよ。しばらくは、学校出てこれないんだよ。」と言う。

それじゃ仕方ないな。と思っていたら、健二は「あそこの遺産って莫大だろうな。理先輩は、まだ、未成年だからすぐに影響はしないけどさ。理先輩の母親が相続したのをいずれは、相続するんだろ?長男なんだから。」と言い出す。

私は、わけがわからず、「理先輩の家って、お金もちなの?」って聞くと、健二は眼を見開き「お前、彼女なのにそんなことも知らないの? 理先輩の母親の出身が伊集院だって。」と言った。
伊集院と言えば、財閥系企業で、毎日のようにCMも見る。
そして、トップは親族じゃないと厳しいと言われてる企業だった。
健二は尚も続けた。
「理先輩のお祖父さんが、会長だったんだよ。」と。
私は、呆然としてしまった。
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